大阪地方裁判所 昭和63年(ワ)5570号 判決 1992年3月26日
兵庫県伊丹市緑ケ丘一丁目一四二番地
原告
株式会社ボンニー
右代表者代表取締役
仲野裕典
右訴訟代理人弁護士
石田好孝
同
久岡英樹
大阪市西区境川二丁目五番一五号
被告
佐藤精器株式会社
右代表者代表取締役
佐藤東貴男
右訴訟代理人弁護士
丸山英敏
同
藤原弘朗
右両名輔佐人弁理士
小原和夫
同
濱田俊明
主文
一 被告は別紙物件目録記載の縫製装置を製造し、譲渡してはならない。
二 被告は原告に対し金四二六七万五〇〇〇円及びこれに対する昭和六三年六月二六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 原告のその余の請求を棄却する。
四 訴訟費用は被告の負担とする。
五 この判決の第一項は無条件で、第二項は金二五六〇万五〇〇〇円とこれに対する年五分の割合による金員の支払を求める限度で、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一 請求の趣旨
一 主文第一項同旨
二 被告は原告に対し金五〇四一万五五〇〇円及びこれに対する昭和六三年六月二六日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二 事案の概要
一 原告は次の特許権(以下「本件特許権」といい、その発明を「本件発明」という)を有している(争いがない)。
発明の名称 物品搬送装置
出願日 昭和五六年九月一六日(特願昭五六-一四六九四九号)
出願公開日 昭和五八年三月一九日(特開昭五八-四七六五三号)
出願公告日 昭和六二年一一月一〇日(特公昭六二-五三四〇六号)
設定登録日 昭和六三年六月八日
登録番号 第一四四二八五一号
特許請求の範囲
「1 無端状の搬送路1に沿って複数の加工ステーション7を縦列配置した物品搬送装置に於いて、各加工ステーション7が、
(a) なだらかな下り傾斜の導入路13を作業場所の近傍にまで延し、該導入路13の下端14から急な上り傾斜の上昇路15を連接すると共に、上端16を次段の導入路13に繋いで形成した一連の搬送路1aと、
(b) 上昇路15に配備されて、上昇路下端14から次段の導入路13上へ物品3を持ち上げ移行する吊上げ手段18と、
(c) 導入路13の途中に配備され、前記移行動作と連繋して受け渡し物品3を一組ずつ上昇路15の下端14へ送るゲート部17と、
(d) 手動および自動運転の切換えスイッチと手動スイッチとを具え、手動運転時には、作業者による手動スイッチ操作でゲート部17および吊上げ手段18を単発動作させて物品3を一回送りさせ、自動運転時には、ゲート部17および吊上げ手段18を連続動作させて物品3を自動送りさせる制御部35とから構成されることを特徴とする物品搬送装置。」
二 本件発明の構成要件は次のとおりである(甲一の1公報)。
(1) 無端状の搬送路1に沿って複数の加工ステーション7を縦列配置した物品搬送装置である。
(2) 各加工ステーション7が、なだらかな下り傾斜の導入路13を作業場所の近傍にまで延し、該導入路13の下端14から急な上り傾斜の上昇路15を連接すると共に、上端16を次段の導入路13に繋いで形成した一連の搬送路1aを具備する。
(3) 各加工ステーション7が、上昇路15に配備されて、上昇路下端14から次段の導入路13上へ物品3を持ち上げ移行する吊上げ手段18を具備する。
(4) 各加工ステーション7が、導入路13の途中に配備され、前記移行動作と連繋して受け渡し物品3を一組ずつ上昇路15の下端14へ送るゲート部17を具備する。
(5) 各加工ステーション7が、手動および自動運転の切換えスイッチと手動スイッチとを具え、手動運転時には、作業者による手動スイッチ操作でゲート部17および吊上げ手段18を単発動作させて物品3を一回送りさせ、自動運転時には、ゲート部17および吊上げ手段18を連続動作させて物品3を自動送りさせる制御部35を具備する。
三 本件発明の作用効果は次のとおりである(甲一の1公報)。
未熟練者を一つの縫製ステーション宛て一人ずつ配置する一方、熟練者は熟練度に応じた数のステーションを一度に担当させると共に、空きの生じたステーションを自動送り動作させることにより、縫製工の交代に即応できる態勢が可能となる(公報3欄3~8行目)。
縫製工の交代に即応した物品送り動作が可能となり、工程管理及び品質管理が容易となる(公報8欄10~12行目)。
四 被告は次の実用新案権(以下「被告実用新案権」といい、その考案を「被告考案」という)を有する(争いがない)。
考案の名称 吊持具の搬送装置
出願日 昭和五六年九月一一日(実願昭五六-一三六一六二号)
出願公開日 昭和五八年三月一九日(実開昭五八-四一七〇四号)
出願公告日 昭和六二年二月二一日(実公昭六二-七六〇一号)
設定登録日 昭和六二年一〇月一二日
登録番号 第一七〇一一〇四号
実用新案登録請求の範囲
「吊持具のローラーが転動可能な下降レールと上昇レールを交互に接続して架設し、上記下降レールの中間部に交互に作動する二本のストツプシリンダーを配設する一方、上昇レールにはその全長に亘つてピストンが伸縮作動する引揚げシリンダーを配置し、上記各シリンダーが吊持具の存否によつて作動するリミツトスイツチを介して電気的に連動するようにしたことを特徴とする吊持具の搬送装置。」
五 被告は業として別紙物件目録記載の縫製装置(以下「イ号物件」という)を製造販売している(争いがない)。
六 イ号物件は、本件発明の構成要件(1)ないし(3)を具備している(争いがない)。
七 原告は、原・被告間の当庁昭和五九年(ワ)第一三一八号製造販売禁止等請求事件(以下「原・被告間の別件訴訟」という)の昭和五九年七月二六日の口頭弁論期日において、本件発明の公開特許公報を証拠として提出したから、遅くとも被告は右同日本件発明について出願公開されたことを知った(弁論の全趣旨)。
八 原告の請求の概要
イ号物件が本件発明の技術的範囲に属することを理由に、イ号物件の製造・譲渡の停止と、実施料相当の補償金(出願公開を知った日の翌月以降)及び損害金(出願公告日の翌月以降)の合計五〇四一万四五〇〇円の支払を請求。
九 争点
1 本件特許に無効事由があるか。
(一) 本件発明は、原告側ではなく、被告側においてしたものか。
(二) 本件発明は、被告考案の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載の考案と同一であるか。
(三) 本件発明は、当業者であれば容易に発明できるものか。
2 イ号物件は、本件発明の技術的範囲に属するか。
(一) イ号物件は、本件発明の構成要件(4)及び(5)を具備しているか。
(二) イ号物件は、被告考案の実施品であって、本件発明の技術的範囲に属さないということができるか。
3 2が肯定された場合、被告が支払うべき補償金及び損害金の金額
第三 争点に関する当事者の主張
一 本件特許に無効事由があるか。
1 本件発明は、原告側ではなく、被告側においてしたものか。
(一) 被告の主張
本件発明は被告側が発明したものであり、本件特許は、本件発明について特許を受ける権利を有しない原告の特許出願に対してされたものであるから、特許法一二三条一項四号に該当する。
原告は、昭和五五年一二月に後記原告の主張中の説明事項イ~チ、ヌ及びヲの事項を説明して、手動型であったハンガー搬送装置を、被告の専門的知識を借りて全自動化したいという着想(非技術的アイデア)を提供したにすぎない。被告技術者は、右着想を実現して欲しい旨の原告の要請に基づいて、独自の技術と経験を活用して、ゲート部、吊上げ手段等の具体的構造を創作し、併せて両部材間に連携動作を行わせる制御部(エア及び電気的制御回路)等を図面化したうえ、昭和五六年一月三一日にその試作品を原告工場に持ち込み、何回となく試運転を行いつつ更に不具合部分に改善を加え、遅くとも昭和五六年四月には原告の右アイデアを満足させる自動ハンガー搬送装置(本件発明)を完成したのである。発明とは、自然法則を利用した技術的思想である。本件発明において、原告は新規な技術的思想を被告に対し開示せず、単なるアイデアないし要望だけを開示し、技術的解決は専ら被告に委ねたのである。
そして、被告は、本件発明完成の端緒ないし動機となった右原告のアイデアに対し、原・被告間の別件訴訟の控訴審判決に従って、対価を支払っている他、更に、原告の奈儀工場にコストを度外視した低価額でイ号物件に類似のハンガー搬送装置を納入し、これによっても右アイデア料を支払っている。
(二) 原告の主張
本件発明の各構成要件をバラバラに分解して個別にみたうえで、実施例レベルで具体化することは、通常の電気的、機械的な製作技術を有する者であれば容易にできることである。本件発明の制御部35についてもそうであり、これら個別の技術は公知の技術であった。これらの製作に従事した被告は、本件発明を実施するために選ばれた下請負人の一人にすぎない。本件発明の特許性は、これら各個別では公知の技術を、構成要件として纏め、特定の目的に向けて結合した点にあり、それをしたのは原告側であるから、本件発明の発明者は原告側である。
原告側が本件発明を完成するに至った経過は次のとおりである。即ち、原告は、昭和五二年一〇月益田工場の新設に当たりスウェーデン国イートン社製のオーバーハンガーコンベアシステム(以下「イートンシステム」という)を導入した。これはそれまでライン化されていなかった縫製業界にライン化を持ち込むもので、我が国では最初であり、画期的なものであったがあまりに高価で、かつ、複雑であった。そこで原告は、他工場において、ライン化を可能とする安価で、かつ、簡易な搬送装置を使用することを検討した。
原告が意図したところは、縫製のラインシステムともいえるものである。即ち、従前の縫製業界における搬送装置は、一つのワークステーション(作業箇所)で衣類の一定部分(例えば、服のポケット付け、ボタン付け)を縫い上げ、次にそれを別の部分を縫い上げる隣のワークステーションに搬送するというものであった。ところがこの方式では、縫製工の能力によって、工程上、前のワークステーションの縫製工能力が後のワークステーションの縫製工能力に劣る場合、手待ち時間ができ、全体としての作業能力が極端に悪くなる。この欠点を改善する方法として、縫製工程を、同一人が作業した場合同一速度で行える工程に細分化し、換言すれば、同一作業を行うワークステーションを複数化し、しかも各ワークステーション毎の送り動作を独立させると共に、それを自動又は手動に切り換え可能とすることなどによって、作業能力に劣る者(主に未熟練工)の配置によって生じる、熟練工の手空き箇所たる空きワークステーションに自動送りさせることによって、前記作業能力の劣化を防止することができることを着想し、この着想に沿う搬送装置の製作に着手した。
そこで原告は、右着想を実現するため、三谷商店に発注して試作装置を作り、最終的には奈義工場に設置して稼働を開始した。右試作装置の骨子は概略別図一(以下の番号は同図記載のもの)のものであった。それは、<1>の位置で作業が終わると<2>のハンガーをパイプを伝って押し上げ、押し上げたハンガー<4>が<5>のストッパーを押し開いて作業の終わった<3>のハンガーを押し出し、<4>が<3>の位置となり作業を行うもので、ハンガーは<6>↓<2>間は自送で、<2>↓<1>間は手送りであった。また、山形パイプの長さは別図一の<6>ないし<2>をハンガーストック箇所とし一五~一八個のハンガーが吊り下がるような右下方傾斜の長さの一片と、<1>~<2>間を三〇センチの間隔を空けて作業用空間を作るための右上方傾斜の一片とするもので、これらはいずれも試作品の段階で検討を重ねた結果であった。しかしながら、この方法によると、手で押し上げることから連続して作業を行うと肩痛が発生すること、手空きワークステーションへのパス移動も手動であるため、当該縫製工は縫製作業を中止してハンガーの送り作業をしなければならないこと、作業位置が山形の上、即ち別図一の<6>であって、高く作業性が悪いなどの欠点があった。
原告は、右試作装置の欠点を改善するとともに、右試作装置の使用によって取得したノウハウを活用して、このハンガーシステムを自動化することを計画し、その試作装置を発注した相手方が被告である。原告は被告に対し、その試作装置を被告に発注する前提として、上記原告の意図・目的の概要を説明するとともに、試作装置製作に関する内容を他人に漏らさない秘密保持を約束させたうえで、次のような作用をする搬送装置の試作を依頼した(別図二参照。以下の番号は同図記載のもの)。
イ 山形パイプを使用してハンガーを搬送させる。水平パイプでは、ワークステーションにハンガーを移動させる装置、作業終了とともに次のワークステーションにハンガーを送る装置の二つが必要となり、高価なものとなるが、山形パイプとすることにより別図二の1↓3の移動を自然落下(自走)させるものとする。
ロ 山形の最下点3で縫製作業させるものとする。
ハ 1↓2、2↓3のハンガー移動は自然落下(自走)に委ね、3↓4の移動を自動化(機械化)する。
ニ 1~2をハンガーストック場所とするので、その間隔はハンガー一五~一八個が吊り下がる長さとする。
ホ ハンガーの自然落下(自走)を停止させるため、ゲートを2の箇所に付ける。
ヘ ゲート2で停止したハンガーを一個ずつ確実に3に送り出せるように、ゲート装置を考える(従前の装置では、ゲートを解除したとき数個のハンガーが連続して3に送り込まれることがあり、作業に支障を来すことがあったが、そのようなことのないようにする必要がある)。
ト 3より4への移動は迅速にさせる(3の作業が終了しても4への移動が緩慢な場合、それが障害となって2より3へのハンガー移動ができず、手待ち時間を生じるから、そのようなことのないようにする)。
チ ゲートからのハンガー落下と、3から4へのハンガー移動はほぼ同時に作動するようにする。
リ 3にあるハンガーを押さえ付ける装置を付ける(ハンガーからの縫製材料の脱着がハンガーの脱落なく片手でできるようにするため)。
ヌ 1~2間のハンガーが一杯となった場合、直前のワークステーションの3から4への移動を中止させるストップスイッチを設ける。
ル 各ワークステーションにハンガーの自動送りと手動送りとを切り換える切替えスイッチを設け、かつ、手動送りのための手動スイッチを設ける。
ヲ 1↓3の傾斜度合いと、3↓4の傾斜度合いとは原告提示のパイプの見本通りとし、3~4の高低差は二五センチ位とする。
被告は原告の右依頼を引受け、参考にするため原告提示のパイプの見本とハンガーを預かりたい旨申し出たので、これらを被告に預けるとともに、製作依頼の装置については秘密を保持し口外しないことを被告に約束させた。これが昭和五五年一二月四日頃であった。
被告は昭和五五年一二月一〇日頃試作装置の設計図面を持参したが、それは原告が意図し被告に説明した性能を発揮できる水準に達しておらず、欠点のあるものであった。即ち、右設計図面の装置は、<1> 吊り上げ方法がハンガーの支柱を引っ掛け引き揚げる方式となっており、これでは、縫製材料を吊り下げたハンガーの重みでハンガーがパイプより脱輪する可能性がある。<2> またこの方式では、ハンガー重量がワークステーションによって差がある場合があるため、重い場合は垂直に垂れ下がるので、そのまま4の位置にまで引き揚げることができるが、重量が軽い場合は斜めに引き揚げられ、4の位置まで引き揚げられない場合が生じる。<3> ゲート装置、引き揚げ装置とも、作業者側に設置されているため、作業の障害になるとともに、作業者に危険である。<4> しかも引き揚げ装置は3~4の下方に設置されており、これも作業に支障をもたらす。<5> 3にハンガーが下がって来たとき、ハンガーを押さえる装置がなく、これでは片手で縫製材料をハンガーから着脱できない。<6> 3↓4の傾斜度合いを、緩やかな1↓3の傾斜度合いより急なものにする必要がある。
これらの欠点を改良して被告による最初の試作装置が出来上がったのが昭和五六年一月三一日頃であった。そしてその後も細かい改良を重ねて完成したのが本件発明である。以上で明らかなとおり、本件発明をしたのは原告側である。
なお、本件発明の実施品の製作を原告が被告に発注したのが昭和五六年四月二〇日頃であり、原告はこの際も、本件発明が他に漏れないよう、他に販売することがないよう被告に要求し、被告もその旨承諾していた。しかるに、被告は右約定に違反したため、原告が被告に対し損害賠償請求訴訟を提起したのが原・被告間の別件訴訟であり、それに対する判決が甲第六、第一三号証である。
2 本件発明は、被告考案の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載の考案と同一であるか。
(一) 被告の主張
本件発明は、先願の被告考案の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、まとめて「被告考案明細書」という)に記載の考案と同一であるから、本件特許は特許法二九条の二第一項に違反する。もっとも、被告考案明細書には「自動・手動の切換えスイツチ」の記載がないことは原告主張のとおりであり、原告は自動・手動の切換えスイツチが本件発明の最重要な構成要件である「制御部35」の中核である旨主張するが、制御部の本質は、自動・手動の切換えスイツチではなく、各所に配置されたリミットスイッチの信号を処理するための回路構成にある。本件発明においても、被告考案においても、本質である全体的制御は各所に配置されたリミットスイッチの信号に基づいており、ハンガーが移動することによってローラーが順次リミットスイッチを押し、この信号をエア回路又は電気回路によって処理することにより、ストップシリンダーや引揚げシリンダーを動作させているのである。基本的な制御は、本件発明も被告考案も全く変わらない。
自動・手動の切換えスイツチは、当業者にとっては非常に簡単な技術としかいいようがないものである。本件特許出願願書添付図面によって説明すると、第6図が電気回路使用の制御部の全構成であり、48がバネ等によって常時開側に戻るように付勢されている(復帰型の)手動スイッチであり、53が自動・手動の切換えスイツチである。ところで、被告考案においても、自動・手動の切換えスイツチ53を除き、右制御部の構成が全て存在している。リミットスイッチの信号を処理することができなければ、一回送りさえ不可能であるからである。したがって、本件発明にのみ存在する技術というのは、端的にいえばスイッチ53だけである。このスイッチ53は手動スイッチ48と並列に接続されており、接点を開いている場合(手動運転時)にはスイッチ53には電流が流れないので機能的には無視してよく、存在しないのと同等になる。したがって、手動スイッチ48を一回押すことによってシステムが一回だけ送られる。これらの構成は被告考案と同一である。次に自動・手動の切換えスイツチ53の接点を閉じれば、手動スイッチ48をバイパスして電流が流れ続けるので、手動スイッチ48を閉じたままにするのと同様になり、システムが一回送りを完了すれば再び動作を行うというように、反復動作を行うのである。なお、手動スイッチ48を復帰型ではなく、一回押すと閉じたままになるような機構(例えば周知のロック機構付スイッチ)を採用すれば、自動・手動の切換えスイツチ53は無用の構成になることは明らかである。
このように、原告が主張する制御部35の本質は、実は被告考案においても具備しており、存在しないのは手動スイッチでも容易に代替することができる自動・手動の切換えスイツチ53だけという非常に単純なものである。このような単純な技術であるから、当業者にとって、本件発明の構成は、被告考案に周知のバイパス機構を付加しただけのものであり、このように構成することは、シーケンス技術者にとって極めて常識の範囲内のことである。したがって、本件発明は被告考案と同一というべきである。
(二) 原告の主張
被告考案は、本件発明の必須の構成要件(5)の「制御部」を具備していない。被告考案明細書中には、作業者のいないステーションの存在についての記載が全くなく、そこにみる「フットスイッチ」は常に作業者によってハンガーを手動送りするためのものでしかなく、作業者のいないステーションでのハンガーの自動送り(素通り)についての配慮は全くない。本件発明の最大の特徴は右構成要件(5)にあり、被告考案はこれを具備していないから本件発明と同一でないことは明らかである。特許庁審決(甲三七)も同旨の判断を示している。なお、被告考案は、被告が本件発明の内容を原告から知得したものを、原告の承諾も得ずに無断で出願し登録を得たものである。
被告主張のロック機構付プッシュスイッチに関して付言すると、被告主張のとおりロック機構付プッシュスイッチを採用したとして、作業者のいないステーションでロック機構付プッシュスイッチをオンにして自動送りすることは可能であるが、しかし、当該ステーションは常に作業者がいないのではなく、次には作業者がいる場合がある。その場合に右プッシュスイッチをオフにするのか。それでは加工済みのハンガーを送れない。かといってオンにすれば、ハンガーは常に自動送りとなり、未加工のハンガーまで次のステーションへ連続送りされてしまう。それを防止するためには、作業者は右プッシュスイッチをオンにした後、厳密なタイミングを取りながらオフにする二回押し操作をくりかえさなければならないが、そのような煩瑣な作業は実際の縫製作業においては実行不可能であることはいうまでもない。本件発明の制御部35が、手動・自動運転の切換えスイッチを備えたうえで、手動運転時用の手動スイッチを備えているのは、まさに、このような作業者の煩わしさを取り除くためでもある。
3 本件発明は、当業者であれば容易に発明できるものか。(被告の主張)
前記2(一)主張のとおりであるから、本件発明は当業者が容易に発明することができたものである。したがって、本件特許は特許法二九条二項に違反する。
二 イ号物件は、本件発明の技術的範囲に属するか。
1 イ号物件は、本件発明の構成要件(4)及び(5)を具備しているか。
(一) 被告の主張
(1) 本件特許には右のとおり無効理由があり、かつ、本件発明の構成要件(4)にいう「ゲート部17」についての特許請求の範囲の記載は機能的かつ概念的であって、その記載のみでは構成の実体が把握できないから、本件発明の詳細な説明及び図面(第3図ab)に明記されている、一本のシリンダ19のロッド20の先端に第一・第二停止棒21・22を連結支持せしめた構造に限定されるべきである。これに対し、イ号物件のゲート部17は、交互に作動する二本のエアシリンダ19・19から構成された構造になっており、明らかにその構造が相違し、右構造の相違によってもたらされる作用効果においても差異があるから、イ号物件は本件発明の構成要件(4)を具備しない。
本件発明の如く、第一・第二停止棒を備えたゲート機構を、一本のシリンダーによって作動させる場合、右第二停止棒はスイング動作を行うことになり、これが該停止棒の枢支部における工作上の許容誤差から生じるがたつき、並びに各停止棒に分散されるシリンダーロッドの作用力の減衰等と相まって該停止棒の作動遅れを起生させ、一度に複数のハンガーを通過させる原因となる他、かかる構造では各停止棒に加わる負荷、即ちハンガーの衝撃又は停留ハンガーの加算重量などに耐え切れず、しばしばハンガーが脱線する等のトラブルが避けられない。これに対し、該部に二本のシリンダーを使用するイ号物件では、各シリンダーのピストンロッド先端が直接的に個々のハンガーを制止するものであるから、右のようなトラブルの発生が皆無となり、ストッパーとしての機能的精度を著しく向上せしめ得るのである。
(2) 本件発明の構成要件(5)にいう「制御部35」は、右(1)と同旨の理由で本件発明の詳細な説明及び図面(第5図、第6図)に明記されている構成に限定されるべきである。これに対し、イ号物件の制御部は別紙イ号物件制御回路図に記載の電気的回路に従って動作する構成であるから、構成が明らかに相違し、イ号物件は本件発明の構成要件(5)を具備しない。
(二) 原告の主張
(1) 本件発明の構成要件(4)のゲート部17に関し、特許請求の範囲中において、これを一本のシリンダー方式に限定する旨の記載文言がないばかりか、発明の詳細な説明中には、「なお、ゲート部17・・・は、上記のものに限定されるものではなく、同様の動作をするものであれば、適宜変更して実施できることは勿論である。たとえば、エアーシリンダーに代えて、油圧あるいは電磁シリンダーを用い・・・るなどの変更は本発明の範囲に含まれる。」(公報7欄27~8欄6行目)と記載されていることからも、被告主張の誤りは明白である。イ号物件が本件発明の構成要件(4)を具備していることは明らかである。
(2) イ号物件が本件発明の構成要件(5)を具備していることは明らかである。
2 イ号物件は、被告考案の実施品であって、本件発明の技術的範囲に属さないということができるか。
(一) 被告の主張
前記一2(一)に詳述したところから明らかなとおり、イ号物件は、本件発明より先願の被告考案を技術的に忠実に再現し、これに周知技術を付加しただけのものであるから、本件発明の技術的範囲に属さないことは明らかである。被告は、被告の有する被告実用新案権の行使として、適法にイ号物件の製造販売をすることができるのである。
(二) 原告の主張
前記一2(二)に詳述したところから明らかなとおり、被告考案は本件発明の最大の特徴である構成要件(5)の制御部を具備しておらず、イ号物件は、本件発明の構成要件(5)の制御部を具備しているから、被告考案の実施ではなく、本件発明の実施であることは明らかである。
三 被告が支払うべき補償金及び損害金の金額
1 原告の主張
被告は、本件発明につき出願公開されたことを知った後の昭和五九年八月一日から昭和六二年一〇月末日までの間にイ号物件を加工ステーションで算定して合計一四八一台製造販売した。その一台当たりの販売価格は平均二九万五〇〇〇円、本件発明の実施につき通常受けるべき実施料率は販売価格の一〇パーセントを下らないから、原告は被告に対し右期間の補償金として四三六八万九五〇〇円の支払を求めることができる。
また、被告は、本件発明につき出願公告された後の昭和六二年一二月一日から昭和六三年五月末日までの間にイ号物件を加工ステーションで算定して合計二二八台製造販売した。その一台当たりの販売価格は平均二九万五〇〇〇円、本件発明の実施につき通常受けるべき実施料率は販売価格の一〇パーセントを下らないから、原告は被告に対し右期間の損害金として六七二万六〇〇〇円の支払を求めることができる。
2 被告の認否
被告がイ号物件を、昭和五九年八月一日から昭和六二年一〇月末日までの間に合計一四八一台製造販売したこと、昭和六二年一二月一日から昭和六三年五月末日までの間に合計二二六台製造販売したことは認める。
第四 争点に対する判断
一 本件特許に無効事由があるか。
1 本件発明は、原告側ではなく、被告側においてしたものか。
被告は、本件発明は被告側が発明したものであり、本件特許は、本件発明について特許を受ける権利を有しない原告の特許出願に対してされたものである旨主張するが、本件全証拠をもってしても、右被告主張事実を認めることはできない。
かえって、証拠(甲一の1、七の1ないし5、一四の1ないし3、一五の1ないし4、一八ないし二〇、二一の1、2、二二、二三、二四の1、2、二五、二八、三〇、三一、三七、三九の1、2、乙四ないし六、七の4、八の1、2、九の1ないし3、証人仲野泰夫、同武田篤二)及び弁論の全趣旨を総合して考えると、
(一) 前記「第三争点に関する当事者の主張」一1「(二)原告の主張」の項に記載の経過により、原告側が本件発明をしたこと(但し、原告益田工場にイートンシステムを導入したのは昭和五三年一一月頃であり、また、三谷商店への試作装置発注前の段階での構想は、縫製工程を、同一人が作業した場合同一速度で行える工程に細分化し、該工程数あるいはそれ以上の数のワークステーションを設けること、各ワークステーション毎の物品送り機能を独立させること、各ワークステーションの送り動作を手動で行うことなどによって、未熟練者を一つのワークステーション宛一人ずつ配置する一方、熟練者は熟練度に応じた数のワークステーションを一度に担当させて作業能力の劣化を防止することであり、三谷商店へ発注した試作装置を用いて作業した過程において、作業者負担軽減のために吊上げ手段を設け、かつ各ワークステーション毎の物品送り動作を自動及び手動の切り換え可能として、空きワークステーションを自動送り動作することを着想したと認められる。)、
(二) 本件発明が特許に値すると評価される理由は、本件発明を構成する山形状のレール、吊上げ手段、ゲート部ないしそのストッパー装置、それらの制御装置、自動・手動の切換えスイツチ等個々の手段(技術・装置)にあるのではなく、これら個々の手段(技術・装置)は公知の手段(技術・装置)ないしはそれらから推考容易な手段(技術・装置)であるが、これら技術的要素を、本件発明が企図する作用効果、即ち「縫製工程を、同一人が作業した場合同一速度で行なえる工程に細分化し、該工程数あるいはそれ以上の数の縫製ステーションを設けること、各縫製ステーション毎の物品送り機能を独立させること、各ステーションの送り動作を自動および手動の切り換え可能とすること、各ステーションに搬送物品の予備保管所を設けること」(公報2欄23~3欄1行目)が可能な搬送装置を製作し、この搬送装置を使用して、
「未熟練者を一つの縫製ステーシヨン宛て一人ずつ配置する一方、熟練者は熟練度に応じた数のステーシヨンを一度に担当させると共に、空きの生じたステーシヨンを自動送り動作させることにより、縫製工の交代に即応できる態勢が可能とな…る」(公報3欄3~8行目)、また、「各縫製ステーション7の送り機能を独立させると共に、縫製工の有無に応じて自動送り或いは手動送り
(公報の「自動送り」の記載は誤記と認める。)の切り換えを可能とした」(公報8欄7~10行目)ことにより、「縫製工の交代に即応した物品送り動作が可能となり、工程管理および品質管理が容易となる」(公報8欄10~12行目)という作用効果を奏する、本件発明の目的に向けて、本件発明の構成要件として有機的に結合した技術的思想にあり右技術的思想の創作をしたのは原告側の技術者であること、
(三) 被告側の技術者は本件発明を構成する吊上げ手段、ゲート部ないしそのストッパー装置及びそれらの制御装置の具体的構造に関して種々工夫して右技術的思想の具体化としての装置の作成に協力したことは否定できないが、それは、原告との契約に基づき、本件発明を構成するこれら個々の手段(技術・装置)の概要及びそれが作用すべき本件発明に必要な機能(原告側が必要とする機能)を原告側から明示されてしたものであって、これら必要な解決すべき課題の認識及び要求される機能が明確であれば、従前より周知の技術要素の組合わせによって、当業分野の技術者が容易に構成製作できる程度のものであること、
を認めることができる。したがって、被告側の技術者は、単なる補助者にすぎず、右被告の主張は採用できない。
2 本件発明は、被告考案の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載の考案と同一であるか。
被告考案は、本件発明の構成要件(5)を具備していないことは明らかである(被告考案明細書に、「自動・手動の切換えスイツチ」に関する記載がないことは、被告も認めている)。そして、前項判示のとおり、本件発明が特許に値すると評価される理由は、本件発明を構成する山形状のレール、吊上げ手段、ゲート部ないしそのストッパー装置、それらの制御装置、自動・手動の切換えスイツチ等の、本件発明から切り離された状態での個々の手段(技術・装置)にあるのではなく、これら個々の手段(技術・装置)は公知の技術ないしそれから推考容易な技術であるが、これら技術的要素を、本件発明が企図する前記作用効果を奏する、本件発明の目的に向けて、有機的に結合した技術的思想にあると認められるから、本件発明の中核は構成要件(5)の制御部であり、そのまた中核が自動・手動の切換えスイツチの採用にあることは明らかである。
被告は、制御部の本質は、自動・手動の切換えスイツチではなく、各所に配置されたリミットスイッチの信号を処理するための回路構成にある旨、そして、自動・手動の切換えスイツチは、当業者にとっては非常に簡単な技術としかいいようがないものである旨、また、手動スイッチ48を復帰型ではなく、一回押すと閉じたままになるような機構(例えば周知のロック機構付スイッチ)を採用すれば、自動・手動の切換えスイツチ53は無用の構成になることは明らかである旨、原告が主張する制御部35の本質は、実は被告考案においても具備しており、存在しないのは手動スイッチでも容易に代替することができる自動・手動の切換えスイツチ53だけという非常に単純な技術であって、当業者にとって、本件発明の構成は、被告考案に周知のバイパス機構を付加したしただけのものであり、このように構成することは、シーケンス技術者にとって極めて常識の範囲内のことであるから、本件発明は被告考案と同一というべきである旨主張するが、被告考案明細書中には、作業者のいないステーションの存在についての記載が全くなく、作業者のいないステーションでのハンガーの自動送り(素通り)についての配慮が全くないから、右被告主張は到底採用できない。また、前記判示のとおり、本件発明明細書中の、吊上げ手段とゲート部に関する制御回路も、従前より周知の回路構成要素の組合わせであって、要求される機能が明確であれば、当業分野の技術者が容易に構成できる程度のものであると認められるから、この点に関する右被告主張も採用できない。
3 本件発明は、当業者であれば容易に発明できるものか。
被告は、本件発明は当業者が容易に発明することができたものである旨主張するが、右被告主張事実を認めるに足りる証拠はない。
4 以上のとおりであるから、本件特許に無効事由がある旨の被告主張は採用できない。
二 イ号物件は、本件発明の技術的範囲に属するか。
1 イ号物件は、本件発明の構成要件(4)及び(5)を具備しているか。
被告は、本件発明の構成要件(4)にいう「ゲート部17」は、本件発明の詳細な説明及び図面(第3図ab)に明記されている、一本のシリンダ19のロッド20の先端に第一・第二停止棒21・22を連結支持せしめた構造に限定されるべきであり、また、本件発明の構成要件(5)にいう「制御部35」は、本件発明の詳細な説明及び図面(第5図、第6図)に明記されている構成に限定されるべきである旨主張するが、そのように本件発明の右各構成要件を限定しなければならない理由を見出すことはできない。
そして、イ号物件が、本件発明の構成要件(4)及び(5)を具備していることは明らかである(被告も、本件発明の構成要件(4)及び(5)を、被告主張のように限定しない限り、イ号物件が右各構成要件を具備していることになることは認めている)。
2 イ号物件は、被告考案の実施品であって、本件発明の技術的範囲に属さないということができるか。
被告は、イ号物件は、本件発明より先願の関係にある被告考案を技術的に忠実に再現し、これに周知技術を付加しただけのものであるから、本件発明の技術的範囲に属さないことは明らかである旨主張する。確かに、イ号物件は被告考案の構成要件を全て備えているから被告考案の実施品であることは被告主張のとおりである。しかしながら、本件発明は前示のとおり被告考案にはない構成要件(5)の構成を要件としており、被告考案と同一の発明ではないところ、イ号物件は、本件発明の構成要件を全て備えているから、本件発明の技術的範囲に属することは明らかである。イ号物件が本件発明の技術的範囲に属する以上、それが被告考案の実施であるということができても、本件特許権との関係では、イ号物件の製造販売を適法ということはできない。したがって、右被告主張も採用できない。
3 以上のとおりであるから、イ号物件は本件発明の技術的範囲に属するといわざるを得ない。なお、被告は、最終的には、特許法七九条所定の先使用による通常実施権取得の主張を撤回したものと認められるが、仮にその主張を維持しているとしても、前記判示のとおり、本件発明は原告側がしたものであり、被告は原告からの発注を受けて本件発明の実施品の製作をしたものと認められるから、被告は本件特許権につき特許法七九条所定の先使用による通常実施権を取得できず、その主張も採用できない。
三 被告が支払うべき補償金及び損害金の金額
1 補償金の金額
被告は、本件発明につき出願公開されたことを知った後の昭和五九年八月一日から昭和六二年一〇月末日までの間にイ号物件を加工ステーションで算定して合計一四八一台製造販売した(争いがない)。証拠(甲三四ないし三六、三八、四〇、証人仲野泰夫)及び弁論の全趣旨によると、イ号物件の場合、原告が本件発明の実施(製造・販売)につき通常受けることができる実施料はその加工ステーション一台当たり二万五〇〇〇円と認めるのが相当であるから、原告は被告に対し右期間の補償金として三七〇二万五〇〇〇円(一四八一×二万五〇〇〇円)の支払を求めることができるというべきである。
2 損害金の金額
本件発明につき出願公告された後の昭和六二年一二月一日から昭和六三年五月末日までの間に、被告がイ号物件を加工ステーションで算定して合計二二八台製造販売した旨原告は主張するが、右期間に製造販売したことを被告が認める合計二二六台(加工ステーション)を超える製造販売事実を認めるに足りる証拠はない。証拠(甲三四ないし三六、三八、四〇、証人仲野泰夫)及び弁論の全趣旨によると、イ号物件の場合、本件発明の実施(製造・販売)につき通常受けることができる実施料はその加工ステーション一台当たり二万五〇〇〇円と認めるのが相当であるから、原告は被告に対し右期間の損害金として五六五万円(二二六×二万五〇〇〇円)の支払を求めることができるというべきである。
3 合計金額
したがって、被告が原告に対し支払うべき補償金と損害金の合計金額は四二六七万五〇〇〇円となる。
(裁判長裁判官 庵前重和 裁判官 長井浩一 裁判官 辻川靖夫)
物件目録
(イ号物件)
別紙図面に示す縫製装置
構造
無端状の角パイプ製搬送路1に沿って多数の加工ステーション7を縦列配置し、該搬送路1に衣服一着分の全パーツを吊持した多数のハンガー3を乗せ、縫製工程順に並べた各加工ステーション7に前記ハンガー3を先のものから順に送り込み、各ハンガー3が全ての加工ステーシヨン7を通過すると、一着分の衣服が完成できるようにした基本形態を採る。
各加工ステーション7に臨む搬送路1aは、なだらかな下り傾斜の導入路13と、急な上り傾斜の上昇路15とを交互につないで一連に形成されている。
導入路13の途中には、該導入路13上を自重で転がり移動して来るハンガー3をいったん停止させるためのゲート部17が配備されている。このゲート部17としては、ピストンロッドが導入路13上を交互に横切る二本のエアシリンダ19・19を備えており、いったん停止させたハンガー3を一本ずつ導入路13の下端14に送り込む。
上昇路15には、導入路13の下端14にあるハンガー3を次工程の導入路13の上部へ持ち上げ移行するための吊上げ手段18が配備されている。この吊上げ手段18としては、エアシリンダ25を備え、該シリンダ25のピストンロッドの下端に爪片27を取り付けてあり、該ロッドが伸縮作動することで、爪片27がハンガー3の上端のローラ軸部に引っ掛かる。
各加工ステーション7に臨む上昇路15には、前記エアシリンダ25を支持する支持部材51を固定してあり、この支持部材51に制御部(制御ボックス)35を備えている。この制御部35内にゲート部17と吊上げ手段18とを後述の要領で作動制御するための電気制御回路を有する。
該制御部35の一側外面に手動運転と自動運転の切換えスイッチ53、電源ランプ54、前記エアシリンダ25の上昇操作用押圧ボタン55がそれぞれ設けられている。なお、押圧ボタン55は縫製作業の完了時に、各加工ステーション7に残る最終のハンガー3を順次移動させて行くためのものである。
なお、各ゲート部17にはスイッチ片41を、各導入路13の下端14にはスイッチ片42を、各導入路13の上端近くにはスイッチ片43をそれぞれ配してあり、これらの各スイッチ片41・42・43が対応する各位置でのハンガー3の存否を検出する。
作用
各加工ステーション7において、各ハンガー3は導入路13を自重で転がり移動し、途中のゲート部17でいったん受け止められる。通常、このゲート部17には後続のハンガー3が数本ストック状態で停止されている。なお、縫製作業の遅滞等で導入路13上でのハンガー3のストック量が一定以上になると、これがスイッチ片43でキャッチされて先行の加工ステーション7からのハンガー送りが停止される。
ゲート部17における二本のエアシリンダ19・19のピストンロッド20・20は交互に伸縮作動し、いったん停止させた先行のハンガー3から順に一本ずつ該ハンガー3を導入路13の下端14の作業位置に移行させる。この作業位置からハンガー3が吊上げ手段18で上昇路15に沿って持ち上げられ、次段の加工ステーション7の導入路13に移行されて行く。これの繰り返しで、各ハンガー3が全ての加工ステーション7を先のものから順に通過する。
実際の運転に際し、作業者の居る加工ステーション7では、制御部35の切換えスイッチ53を手動運転に切換えておく。導入路下端14に位置するハンガー3のパーツに作業者が所定の加工を施し、その作業が終わると、作業者は手動スイッチ(フットスイッチ)を操作する。すると、ゲート部17と吊上げ手段18とが同時に単発作動し、作業位置にあったハンガー3は吊上げ手段18で持ち上げ移行されると同時に、ゲート部17が開いて先行のハンガー3が一本だけ導入路下端14へ入れ代わりに転がり移動して来る。なお、吊上げ手段18のエアシリンダ25はハンガー3を持ち上げ移行したのち、直ちに前記爪片27が下降するよう作動し、導入路下端14に入れ代わりに案内されて来たハンガー3に該爪片27が係合し、次の作動に備える。ゲート部17も同様にして次の作動に備える。
作業者のいない空ステーション7では、前記制御部35の切換えスイッチ53を自動運転に切換えておく。この場合、前記スイッチ片41・42で該当部位にハンガー3が存在することを検出している限り、ゲート部17と吊上げ手段18とが同時に連続動作し、導入路下端14のハンガー3とゲート部17で停止されていたハンガー3とが一組ずつ前述の要領で先送りされて行く。次段の加工ステーション7における導入路13上に所定量のハンガー3がストックされていると、これがスイッチ片43で検出されてゲート部17と吊上げ手段18との連続動作はハンガー送りが可能となるまで待機する。
図面の簡単な説明
第1図は概略的に説明する正面図、第2図は要部の正面図、第3図は要部の背面図、第4図は第2図おけるA部(制御部)を示す斜視図である。
第1図
<省略>
第2図
<省略>
第3図
<省略>
別図一
三谷商店製作の試作装置
<省略>
別図二
被告に指示の改良装置案
<省略>
イ号物件 制御回路図
<省略>
LS:リミットスイッチ
RS:リセットスイッチ
V:バルブ
Fsw:足踏みスイッチ
W:電源ランプ
F:ヒューズ
<19>日本国特許庁(JP) <11>特許出願公告
<12>特許公報(B2) 昭62-53406
<51>Int.Cl.4B 65 G 9/00 35/00 識別記号 庁内整理番号 7816-3F 6662-3F <24><44>公告 昭和62年(1987)11月10日
発明の数 1
<54>発明の名称 物品搬送装置
<21>特願 昭56-146949 <65>公開 昭58-47653
<22>出願 昭56(1981)9月16日 <43>昭58(1983)3月19日
<72>発明者 西村喜夫 岡山県勝田郡奈義町荒内西734番地 株式会社ボンニー奈義工場内
<71>出願人 株式会社ボンニー 伊丹市縁ケ丘一丁目142番地
<74>代理人 弁理士 折寄武士
審査官 小菅一弘
<57>特許請求の範囲
1 無端状の搬送路1に沿って複数の加工ステーシヨン7を縦列配置した物品搬送装置に於いて、各加工ステーシヨン7が、
(a) なだらかな下り傾斜の導入路13を作業場所の近傍にまで延し、該導入路13の下端14から急な上り傾斜の上昇路15を連接すると共に、上端16を次段の導入路13に繋いで形成した一連の搬送路1aと、
(b) 上昇路15に配備されて、上昇路下端14から次段の導入路13上へ物品3を持ち上げ移行する吊上げ手段18と、
(c) 導入路13の途中に配備され、前記移行動作と連繋して受け渡し物品3を1組ずつ上昇路15の下端14へ送るゲート部17と、
(d) 手動および自動運転の切換えスイッチと手動スイツチとを具え、手動運転時には、作業者による手動スイツチ操作でゲート部17および吊上げ手段18を単発動作させて物品3を1回送りさせ、自動運転時には、ゲート部17および吊上げ手段18を連続動作させて物品3を自動送りさせる制御部35とから構成されることを特徴とする物品搬送装置。
発明の詳細な説明
本発明は循環式に構成した物品搬送装置、より詳しくは循環路の一部にハンギングステーシヨンを設けて1着分の全パーツをハンガーに掛け、該ハンカーを下流側に配設した複数の縫製ステーシヨンへ順送りしながら各ステーシヨンでパーツを順次取り付けて行き、ハンガーが循環路を一巡する間に一着分の衣服を完成する形式の縫製工場で使用する搬送装置に関する。
通常、単品種の衣服を大量生産する場合、無端状の搬送路に沿つて複数の縫製ステーシヨンを配置し、搬送装置て縫製物品を同時に間欠送りしながら、各縫製ステーシヨンに1人宛て配した縫製工が衣服の一部分ずつを縫い合せて行き、搬送路を縫製品が一周する間に一着の衣服が完成される形式のものが多い。ところが一般に、各縫製工の熱練度に応じて縫製速度は著しく相違し、従つてかかる方式を円滑かつ能率的に進めようとすると、縫製工程を縫製工の経験に応じて割り振つた後、最も未熟な者の縫製速度に合わせて物品の搬送速度を設定せねばならない。しかしながら、かかる設定は実際上完全に行なうことは極めて難しく、ある程度の誤差は容認せねばならず、時間的に余裕のある者や、逆に忙しく欠陥品を作る虞れがある者が出るなど、効率的な生産は不可能に近かつた。
本発明者は上記問題を解決すべく種々研究を重ねた結果、縫製工程を、同一人が作業した場合同一速度で行なえる工程に細分化し、該工程数があるいはそれ以上の数の縫製ステーシヨンを設けること、各縫製ステーシヨン毎の物品送り機能を独立させること、各ステーシヨンの送り動作を自動および手動の切り換え可能とすること、各ステーシヨンに搬送物品の予備保管所を設けることにより、上記問題を一挙に解消できることを見出した.すなわち、未熟練者を1つの縫製ステーシヨン宛て1人ずつ配置する一方、熟練者は熟練度に応じた数のステーシヨンを一度に担当させると共に、空きの生じたステーシヨンを自動送り動作させることにより、縫製工の交代に即応できる態勢が可能となつたのである。
本発明は、上記縫製方法を実施するのに好適な搬送装置を提供することを目的とする。
以下、図面に示す実施例に基づき、本発明を具体的に説明する。
図面は、本発明にかかる搬送装置を衣服の縫製工場に実施した一例を示すものであつて、第1図のごとく工場内を一巡して戻る無端状の搬送路1を敷設し、該搬送路1上を、第2図に示す様な上端に回転ローラ2を枢支したハンガー3を間欠移行させる。搬送路1はその途中にハンギングステーシヨン4が1箇所配設されており、該ステーシヨン4において前記ハンガー3上に1着分の全パーツ5を吊り下げたあと順次下流側の縫製部6へ向け送り出すと、縫製部6の各縫製ステーシヨン7では予め設定しておいた縫製工程にしたがつて各パーツを縫い上げて行き、全縫製ステーシヨン7をハンガー3が通過する間に1着分の衣服が完成される。完成した衣服は、ハンガー3に吊り下げられたまま縫製部6に続く回収ステーシヨン8に送られて回収され、空のハンガー3だけがハンギングステーシヨン4に戻されて、次の縫製サイクルに備えるのである。
本発明は、前記した縫製部6の構成にその特徴を有する。縫製部6は、予め設定した縫製工程に対応する数の縫製ステーシヨン7を、搬送路1の直線部分に縦列配置したものであるが、各縫製ステーシヨン7は全て略同一構成なので、以下1箇所の縫製ステーシヨン7についてのみ詳述する。
各縫製ステーシヨン7は第2図に示すごとく、前段の縫製ステーシヨン7から送られてきたハンガー3を、手動或いは自動で1台ずつ次段の縫製ステーシヨン7へ送る搬送部9を挾んで両側に、電動ミシンなどの作業用具10を装備した作業台11と、ハンガー3を一時的に滞留させておく予備吊下げ部12とを具えてなる。
搬送部9は、丸パイポを屈曲成形して、なだらかな下り傾斜の導入路13を前段の搬送部9から作業台11の側方上部にまで延したあと、該導入路13の下端14から、急な上り傾斜の上昇路15を延し、該上昇路15の上端16と次段の導入路13とを繋いで一連の搬送路1aを形成すると共に、導入路13の途中には、導入路13を自重で走行してきたハンガー3の移行を一時規制するゲート部17を、上昇路15には、導入路13の下端14に達したハンガー3を次段の導入路13へ吊り上げる手段18を夫々配設している。
ゲート部17は、第3図aおよびbに示すごとく、導入路13と直交して配設したシリンダ19のロツド20先端に第1停止棒21を固定し、シリンダロツド20の突出時に停止棒21が導入路13を越えて臨出可能とすると共に、第2停止棒22を水平面内で回動可能に枢支54し、第1停止棒21の先端と第2停止棒22の一端とを接続棒23で連結枢支することにより、第3図aのごとく、シリンダロツド20の突出時には第1停止棒21が、ロツド20の後退時には第2停止棒22が夫々ハンガー3の吊下げ棒24の移行路を横断して臨出し、ハンガー3の下方移行を阻止可能としている。
吊上げ手段18は、第2図および第4図a、bで示した様に、上昇路15の上方にシリンダ25を具え、該シリンダ25のロツド26の先端に爪片27を取り付けたものであつて、シリンダ25の作動により、ロツド先端の爪片27は上昇路15の上下端14・16間を往復動される。爪片27は、一端をロツド26の下端に枢支し、他端を上昇路15に向けて延し、更に、第4図の正面視において、ロツド26と直角位置から反時計方向にのみ回動可能とすると共に、ばね体28で時計方向に附勢している.従つて、第4図aのごとくハンガー3が上昇路15の下端の切欠き55上に位置している時、シリンダ25の作動により爪片27が下降して回転ローラ2の回転軸29に当ると、爪片27はばね体28に抗して反時計方向に回り、爪片27の先端30が回転軸29を通過し終えると再び、直角位置に戻り、爪片先端30は回転軸29の下方に回り込む.ここでシリンダ25を上昇移行させると、ハンガー3は爪片27の先端30で回転軸29が支持されながら上昇路15に沿つて持ち上げられ、第4図bのごとく、上昇路15の上端16に爪片27が達すると回転軸29は爪片先端30から滑り落ち、次段の導入路13上へ回転コーラ2は移行するのである.
更に上記シリンダロツド26と平行に案内ロツド31が配設される。該案内ロツツド31は、上昇路15の上端16より稍上方に配備された摺動筒32に嵌装して摺動自在とすると共に、下端33と前記爪片27の稍上方を押え板34で連結することにより、シリングロツド26の出没と連繋して上下動され、ロツド26の下降時に押え板34で回軽ローラ2の周面を上方から押えてローラ2の移動を規制し、縫製工の作業時にハンガー3がぐらつくのを防止している。
次に第5図において、上述した吊上げ手段18を手動あるいは自動運動させる制御部35の構成および動作を説明する。制御部35は、主エアー回路36および制御エアー回路37から構成され、制御エアー回路37で発生される制御エアーで切換えバルブ38を切り換えて、該バルブ38と連通するゲート部17および吊上げ手段18のシリンダ19・25を作動させる。制御エアー回路37は、自動および手動運転の切換えを行なう三方バルブ39と、作業台11の下部などどに配設して縫製工の踏操作で切り換わる手動バルブ40と、ゲート部17および上昇路15の下端14とに夫々1組ずつ具えて、ハンガー3の到達を検知すると切り換わる検知バルブ41・42と、導入路13の上端近傍に具えて、導入路13上に必要以上の数のハンガー3がたまると検知して切り換わる規制バルブ43と、案内ロツド31の摺動筒32の近傍に具えて案内ロツド31の上下端に夫々取り付けたスイツチ片45・46の押圧によりシリンダロツド26の上昇あるいは下降状態を検知して切り換わるバルブ44とを、第5図のごとく接続してなる。
上記接続図における各バルブの切り換え位置は、自動運転時の待機状態を示しており、吊上げ手段18の爪片27は上昇路15の上端に位置し、ゲート部17の第1停止棒21が後退して第2停止棒22が臨出している.ここで前段の縫製ステーシヨン7からハンガー3が送られてくると、該ハンガー3は導入路13を自重で下降しゲート部17の第2停止棒22で止まる。それと同時に検知バルブ41が働き、制御エアーが検知バルブ41から規制バルブ43を通り、更に検知バルブ44を介して切換バルブ38に印加され、該バルブ38を切り換える。すると、シリンダー19および25が作動し、ゲート部17の第1停止棒21が突出すると同時に第2停止棒22が旋回してゲートが開くのでハンガー3はゲート部17を通過して上昇路15の下端14に向かう一方、吊上げ手段18の爪片27も該下端14に向け下降し、爪片27を回転ローラ2の回転軸29に引掛ける.この時検知バルブ44の上端が案内ロツド31上端のスイツチ片45で押圧されて該バルブ44は切り換わるので、爪片27は下降から上昇に変わりハンガー3を吊り上げて次段に送るのである。なお、ゲート部17に続けてハンガー3が数組下降して停止している場合には、上記動作を繰り返すことにより各ハンガー3を1台ずつ上昇路15の下端14に送り、吊上げ手段18によつて次段の縫製ステーシヨン7に順次自動運搬される。この動作は、ゲート部17および上昇路下端14の何れにもハンガー3がなくなるまで続けられ、次のハンガー3が到達するまで待機する。
次に、縫製工の作業が伴なう手動運転時の動作を説明する。三方バルブ39を、前記した自動運転位置から手動位置に切り換えると、ゲート部17の第2停止棒22が開き、1台のハンガー3が下降して上昇路15の下端14に達すると同時に吊上げ手段18の爪片27が下降してきて、回転ローラ2の回転軸29の下方に嵌まると共に、押え板34の下面で回転ローラ2の周面を押えた状態で装置は待機する。縫製工は、ハンガー3から必要なパーツを取り外し、所定の手順に従つて加工した後、再びハンガー3に加工品を取り付け、作業台11下方に配した手動バルブ40を踏むと、制御エアーは検知バルブ42、制御バルブ43から手動バルブ40を通り、更に三方ババルブ39を通じて切換えバルブ38に加えられ、該バルブ38を切り換えて爪片27を上昇させ、ハンガガー3を次段に送る.かかる送り動作と連繋して、第3図aのごとくゲート部17の第1停止棒21に係止されていた次のハンガー3は第3図bのごとく第2停止棒22に移し換えられ、更に爪片27が下降に転じると同時に第2停止棒22から解放されて、上記した待機状態に戻る。なお導入路13上に多数のハンガー3が位置して、規制バルブ43の配設位置にまで達すると、制御エアー回路37を開き、吊上げ手段18の動作を強制的に停止してハンガー3の送りを一時停止される.この場合、搬送部9に並設した予備吊り下げ部12に、次段に送るべきハンガー3を吊り下げ保管できるので、次段の停滞時にも何ら支障なく縫製作業が進められる。又、各縫製ステーシヨン7の制御部35は夫々独立しているため、前段の送り動作には何ら影響を与えることはない.
第6図は制御部35の他の実施例であつて、切換バルブ38の切り換えを、エアーを用いるのに代えて電気的に制御している。すなわち、切換バルブ38を電磁バルブ47に取り代える一方、手動バルブ40、検知バルブ41・42に代えて常開のリミツトスイツチ48・49・50を用いている。更に検知バルブ44に代えて配備した切換スイツチ51の上昇側接点と直列に、規制バルブ43に代わる常閉スイツチ52を繋ぎ、並列接続した検知スイツチ49・50を介して電磁バルブ47の一方の制御コイルに接続する一方、切換スイツチ51の下降側接点には、並列接続した手動スイツチ48および自動と手動の切換スイツチ53を介して他方の制御コイルが繋がれている。なお係る電気回路を使用したものにおいても、その動作は前記したものとほぼ同一であるので、説明は省略する。
なお、ゲート部17および吊上げ手段18は、上記のものに限定されるものではなく、同様の動作をするものであれば、適宜変更して実施できることは勿論である。たとえば、エアーシリンダーに代えて、油圧あるいは電磁シリンダーを用い、あるいは又、吊上げ手段18としてチエンコンベアを使用するなどの変更は本発明の範囲に含まれる.
本発明は上記の如く、各縫製ステーシヨン7の送り機能を独立させると共に、縫製工の有無に応じて自動送り或いは自動送りの切り換えを可能としたので、縫製工の交代に即応した物品送り動作が可能となり、工程管理および品質管理が容易となる利点を有する。
図面の簡単な説明
第1図ないし第4図は本発明にかかる搬送装置を示し、第1図は全体の構成を示す概略図、第2図は縫製ステーシヨンの一例を示す斜視図、第3図aおよびbはゲート部の動作を示す斜視図、第4図aおよびbは第2図に示す縫製ステーシヨン正面図である。第5図は各縫製ステーシヨンの制御部、第6図は制御部の他の実施例である。
1…搬送路、3…搬送物品(ハンガー)、7…加工ステーシヨン(縫製ステーシヨン)、12…予備吊下げ部、13…導入路、14…上昇路下端、15…上昇路、16…上昇路上端、17…ゲート部、18…吊上げ手段、19…シリンダ、27…爪片、31…案内ロツド、34…押え板、35…制御部。
第3図 a
<省略>
第3図 b
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第1図
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第2図
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第4図a
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第4図b
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第5図
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第6図
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<19>日本国特許庁(JP) <11>実用新案出願公告
<12>実用新案公報(Y2) 昭62-7601
<51>Int.Cl.4B 55 G 9/00 35/00 識別記号 庁内整理番号 7816-3F A-6662-3F <24><44>公告 昭和62年(1987)2月21日
<34>考案の名称 吊持具の搬送装置
<21>実願 昭56-136162 <65>公開 昭58-41704
<22>出願 昭56(1981)9月11日 <43>昭58(1983)3月19日
<72>考案者 佐藤東貴男 大阪市西区境川2丁目5番15号
<71>出願人 佐藤精器株式会社 大阪市西区境川2丁目5番15号
<74>代理人 弁理士 小原和夫
審査官 小菅一弘
<57>実用新案登録請求の範囲
吊持具のローラーか転動可能な下降レールと上昇レールを交互に接続して架設し、上記下降レールの中間部に交互に作動する二本のストツプシリンダーを配設する一方、上昇レールにはその全長に亘つてピストンが伸縮作動する引揚げシリンダーを配置し、上記各シリンダーが吊持具の存否によつて作動するリミツトスイツチを介して電気的に連動するようにしたことを特徴とする吊持具の搬送装置。
考案の詳細な説明
この考案は、例えば縫製工場などの流れ作業において或る箇所から次の作業箇所に縫製物などを順次移動させる吊持具の搬送装置に関し、その目的とするところは、一連の作業の流れをスムーズにするとともに、仮りに或る作業箇所て渋滞が生じても、作業全体の流れに混乱を生じないようにして、この種の作業能率の向上を計ることにある。
近年、一部の縫製工場などでは、従来の手運びや手押ハンガーに代えて場内を巡つて循環駆動するチエーン回路を架設し、これを主回路として個々の作業箇所毎に分岐チエーンを設け、上記主回路に懸吊される吊持具を作業者がその都度、分岐チエーン側に引込み、作業が終れば再び主回路に戻して、次の作業箇所に送るという機械的搬送方式が採られているが、この方式では主回路のチエーンを常時駆動状態に保たなくてはならないから、これに伴う動力費及び發音発生などの問題の他、或る箇所における作業の停滞が直接次の作業箇所に影響するという工程上の欠点、更にはチエーンなどの油による搬送物の汚染等々、猶改善すべき多くの問題点が残されていたものである。
このような実情に鑑み、本考案は動力を殆んど用いず吊持具の自走を主体とすることによつて上記チエーン駆動方式の問題点をすべて解消したものである。
以下、本案の構成を図面に示す実施例に従つて詳述すると、1、1"は一定の高さに架設され、移送方向に緩やかな傾斜を有する下降レール、1'は上記下降レール1、1"間を連結する上昇レールであつて、いづれも断面が丸、角又はT型などの鋼材乃至はアルミ材などから構成されたものである。
又2、2'は上記下降レール1、1"の上端近傍部(C点)に、又3、3'はその下端近傍部(B点)にそれぞれ設けられたリミツトスイツチ、又4、4'は該下降レールの中間点(A点)に設けられ、そのピストンが交互に作動する二本のストツプシリンダー、更に5、5'は上記各シリンダー4、4'の作動を司るリミツトスイツチである。
次に、6、6……は吊持具であつて、各吊持具は上記各レール1、1'、1"上を転動自在な鍔付ロール6'とその軸心に遊合されたアーム6"とから構成され、アーム下端に縫製品のハンガー(図示せず)を着脱自在としたものである。
更に又7は、上記上昇レール1"の長さに見合うピストン伸縮量を有する引揚げシリンダーで、該ピストン7'の先端に弾装された爪鈎7"が吊持具と系説可能であつて、ピストン7'の下降時には、その爪鈎7"がB点の吊持具を上方のから押止してハンガー装着時などの吊持具の浮上りを阻止するものである。尚、図中8、8……は上記各レールの支持脚を示したものであるが、各レールは支持脚による他、天井から吊設することも亦任意である。
叙上の構成に係る本考案の作動要領を説明すると、第1図においてB点の下方にある作業箇所で所定の作業が終り、作業者がフツトスイツチなどで信号を送ると、この信号に基づいて引揚げシリンダー7が作動する。
この場合、既に伸長し、その爪鈎7"がB点の吊持具6と係合しているピストン7'が短縮して、該吊持具を章引し、上昇レール1'に沿つて次の下降レール1"の上端C点に送るのである。
ただし、C点に先行の吊持具が満滞して“待ち”の状態となつている場合には引揚げシリンダー7は作動しない。
他方、B点に吊持具がなくなると、B点のリミツトスイツチ3とA点のリミツトスイツチ5、5'を介して作動するストツプシリンダー4、4'によりA点の下方シリンダー4のピストンが後退してこれに係止されていた吊持具6の一個が緩やかに転動してB点に至る。
そしてその間A点の上方シリンダー4'はピストンを突出して後続の吊持具6を係止し、B点のリミツトスイツチ3が吊持具の到着で再びONとなると、それまで突出状態にあつたA点の上部シリンダー4'のピストンが後退し、同時に下方シリンダー4のピストンが突出して吊持具を係止する状態に自動的に戻るのである。
以上の記述から明らかなように、本案装置は吊持具が自由転動する緩やかな下降部とシリンダーの作用で吊持具を引揚げる上昇部とを交互に組合せることによつて、上下にジグザグのレールを架設し、作業箇所のある下降レールの下端点には確実に吊持具を一個だけ送るようにすると共に、作業者の信号により作業の終了した吊持具は迅速に次工程へ送り出すことを可能にするが、流れ作業に渋滞がある場合は、送出を止めて工程全般の混乱を自動的に阻止する効果を奏するのである。
従つて本案装置によれば、当初に記載したように従来から一部の縫製工場などで採用されていたチエーン方式の搬送装置に見られた多くの問題点が悉く解消できるものであり、特に回路の大部分が吊持具の自走で行われる本案装置では余分な動力の消費を大巾に削減することが可能で、その省エネルギー効果は極めて顕著である。
図面の簡単な説明
第1図は、本案装置の要部を示す正面図、第2図はその平面図であり、又第3図は吊持具の一例を示す正面図である。
尚、図中1、1"……下降レール、1'……上昇レール、2、2'、3、3'、5、5'……リミツトスイツチ、4、4'……ストツプシリンダー、6……吊持具、6'……鍔付ロール、6"……アーム、7……シリンダー、7'……ピストン、8……支持脚。
第1図
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第2図
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第3図
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第4図
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特許公報
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実用新案公報
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